第02話-5

遺跡自体はギアでもゆうゆう出入りできる。

しかし・・細かく探索するとなればそれはやや不便にもなる


狭い通路は、さすがにギアではつらいものがあった


・・が、こいつの場合・・


「この辺だな」

ロディは意味ありげにつぶやくと、ゼファーの右腕にレーザーブレードを発振させる

ぐぐっ・・と右足を踏み込んで、ゼファーは足下をじっと睨むように構えをとった


「せーのっ!!」


ばっ・・と飛び上がる機体・・

ずごんっ!!


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「何の音だ・・?」

「・・・イヤな予感がしますね・・」


一同とネスは遺跡の方を見て、音の原因をおおよそ理解した

・・すさまじいまでの勢いで粉塵が遺跡の入り口から、吹き出している


「・・・・・」

ネスはいい加減どうでもよくなったようだった。

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・・深度「11」

・・「それ」はすでに不気味な鳴動を始めていた

発動してしまった理由としては、先行調査隊のトラップ発動が発端となっているが・・


・・ともかく、大型の・・巨大な翼をもった「それ」は、稼働状態に入っていた

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深度「5」


シュウ達は先行調査隊と合流、大広間のような空間で、ガーディアンと激戦を繰り広げていた

飛び交う銃弾、スタンライフルの電撃、ライオットの散弾、唸りを上げる拳

いくら攻撃しても敵の数は減らないが、一同はすっかり疲弊していた


「・・残弾が・・!!」

「気合いよ!!」


リィズはそっちを向くでもなく、叫んだ


「冗談にしても無茶言わんでください」

「冗談で戦況が打開できるなら言いまくってやるわよ!!」


・・本気か・・


一同の頬を汗が伝った


「T.Cの少年!予備の武装は持ってないか!?」

「・・・ありません、が・・打開策が一つだけ。」

「あ、あるのかっ!?」


数人が期待のまなざしを向け、シュウはごそごそとまた・・箱を取り出した


「これは・・?」


・・箱が簡単な変形をし、小型の携行ランチャーになる


「超重力圧縮爆砕砲・・名付けてメオ・グラビトロンカノン・・」

「ブラックホールランチャーって事!?・・・そんなの撃ったらこの遺跡ごと吹っ飛ぶわよ!?」


ようやくリィズがシュウの行動に気付き、怒鳴ってくる


「僕のスタンライフルは弾切れないからいいですけど、皆さんはすぐお終いでしょう?・・これ以外ないですよ、僕の策は」

「・・・使うしかないか・・」

「って隊長!!撃ったら外のメンバーも!!」

「それより!!撃ってくれよみんなっ!!何で俺らだけなんだぁーっ!?」


我に返りガーディアンに発砲を再開する一同。

よく考えてみれば今の間はラルフとシード、セラしか戦ってなかった


「とにかく行きますよ。・・・・円周加速開始、フライホイール臨界点・・」


シュウの構えたランチャーに、黒い粒子が収束されていく

・・あからさまに「ブラックホール」を表現したような・・


「チャージアップ・・メオ・グラビトロンカノン・・・・発・・・・!」

ずごぉぉぉっ!!


「うわぁぁぁぁっっ!?」


グラビトロンカノンのものではない、シュウのランチャーは黒い光を前面に集めたまま、唸りを上げている


・・天上から、何かが降ってきたのだ


「熱血根性燻し銀!悪あるならば颯爽と!ローディス=スタンフォード!ご用とあらば即参上ッ!!」


どどんっ!・・とでも効果音が入りそうな名乗りを上げ、ゼファーがガーディアンの群れの上に降り立っていた

一同も突然の・・あまりにも突然の事態にぽかんと口を開けたままになっている


「セラ、無事か?」

「お・・お兄ちゃん・・・???」


さすがにここまで非常識な事をされると、呆れる他ない

病院で寝ていたハズの男が、月の遺跡の、しかもまだ調べ終わっていない遺跡を・・破壊しながら現れたのだ。


「こいつらは任せて、お前らは調査とか何とかをやっとけ」

「お兄ちゃん!それどころじゃないよ~!!お姉ちゃんが・・・」


ゼファーの目が、セラの方を向く

次の言葉を聞くなり、その目はう゛・・ん・・と輝いた


「落ちた!?・・・・ちっ!!」


ゼファーはまた、レーザーブレードを発振した

ガーディアンの群れをなぎ払うのではなく・・足下にまた突き立てる


「な・・何してんのよあんたぁぁ!?」


リィズも突拍子もない行動に思わず叫ぶ

しかしロディは聞く耳持たないかのように、ゼファーの足下を掘り返し・・


落ちて行ってしまった。


大穴が開けられたおかげでガーディアンの攻撃はやんだが、リィズ達はしばし呆然とするしかなかった。

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深度「8」


「・・・はぅ」


メイは再び目を覚ました


・・何だろ、ボク・・なんか大変な事されてたような・・・

うろ覚えの記憶の中に、先ほどまでの状況を探す・・


「っ!?」


ばっ・・と首に手を当ててみる

あれだけ太いケーブルが突き刺さったのだから、恐ろしい傷跡が出来ているに違いない・・

いや、そもそも生きているのが不思議なくらい・・


「・・あれ?」


なんともない

全くもって傷跡どころか、何の変化も起きていなかった

不思議そうに首をさする・・


・・そういえば・・なんで明るいんだろ?


今度はその疑問がわいた

先ほどは何とか辺りの物が見えるくらいで、とても光があるような光景ではなかったはず


「なーんだ、夢かぁ♪」


お気楽に考えて、メイは立ち上がる・・


「お目覚めですか」

「ふぇぇぇーっっっっ!?!?」


後ろからした声に、彼女は飛び上がってしまった


恐る恐る振り返ると・・黄色く光る一つ目の影


「おば・・お・・おばけ・・・・・」

「お化け?・・私は妖怪の類ではありません、「IFR」・・ですよ」


影がゆっくり近づいてきて、明かりに照らし出される・・

・・ネスより少し大きいだろうか、よく街や衛星港でも見かける、インターフェイスロボットだった。

・・なんだ・・ネスの仲間か・・

ほっと胸をなで下ろすメイ


「まずは自己紹介を・・私は「IFSR-γ」本日付であなたをマスターとさせていただきます。」

「いんたーふぇいすそーでぃあん???・・・・がんま・・ガンマ?・・・・君は「ガンマ」っていうの?」

「はい、そのように呼んでいただければ幸いです」


一つ目のIFR・・「剣を従える者(ソーディアン)」の名の通り、二本の剣を背負った彼は丁寧にそう言い、ぺこり・・と礼をひとつする

つられてメイもこちらこそ・・と。


「あ、ガンマぁ・・早速聞きたいんだけど、ボクの首・・なんともなってない?」

「?・・ええ、何ともありません。」


ガンマの一つ目・・・モノアイがメイを調べるが、確かに外傷は無かった


「ヘンだなぁ・・なんかものすごく痛い思いしたような気がするんだけど・・」


首を傾げるメイ

ガンマは歩き出しながら・・今度は逆に質問する


「そういえば・・ご主人、あなたのお名前は?」

「ボク?」


ぱちくり、と目を瞬きさせた後で、メイはにっこりと笑い・・


「ボクはメイ、メイナード=リィオン!」

「メイ様は男子でいらっしゃいますか・・」

「あう゛・・」


ずるっ・・とコケるメイ


「ち、違うよ~・・ボクは女の子だよ~・・」

「?・・ですが今確かに「ボク」と・・それは男子の自称です」

「・・・むぅ~・・見ればわかるじゃんっ!どっからどー見たってボク女の子っ!!・・ほら、胸だってあるし♪」

「む・・胸??」


ガンマはやや圧倒されながら、彼女の全身を見据えている


・・「平坦」ですな。


いくら相手が「お子様」でも絶対それだけは言ってはならない


「・・了解しました」


ガンマはとりあえず了解だけし、その言葉は言わないでおいた


・・本当にこの方を・・こんな年端もいかない子供を「セプター」に選んだのか・・?


無駄に騒いでいるメイの傍らで、ガンマは難しい顔をしていた。

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